N響指揮者 岩城宏之
女性作曲者
昔、NHK交響楽団の指揮者を務めた岩城宏之さんという方がいました。その岩城さんが書いた本に「楽譜の風景」があります。肩の凝らないエッセイ集です。その中には古今の大作曲家の名が大勢出てきます。もちろん演奏者の名も。ほとんど欧米の大音楽家ばかりですが、読み進むうちに不思議なことに気づきました。ひとりとして女性の名が出てこないのです。岩城氏がこの文章を書いた40年前は女性の社会的立場は今よりも弱いものだってでしょうし、この本の内容を成す大音楽家たちが生きた時代はそれよりもさらに、とは思います。それにしても女性作曲家ってそれほど少ないのでしょうか。私の記憶にあるのは、あのロベルト・シューマンの妻クララ・シューマンや、「乙女の祈り」を書いたポーランドのパダジェフスカ、あるいはグスタフ・マーラーの妻アルマ・マーラーくらいしか知りません。私が知らないだけで、まだ大勢いるのかもしれませんが、それにしても歴史の表面に出てくる女性作曲家は多くはありません。
私たちが日ごろコンサートなどで接する近年の演奏家にはピアノでも弦楽関係でも女性が極めて多くなってきています。大小のオーケストラでは、一見すると学生の交響楽団かと見まがうばかりの若さで、しかも女性が多い。音楽界は多分女性上位なのです。今日に至るまでの長い音楽史が続いてきた時代とは違います。しかし、テレビで見る欧米の大交響楽団に女性奏者はいまでもあまり見られません。クラシックの音楽シーンに女性が多いのは日本だけの特色なのでしょうか。もちろん独奏者には女性も多いのですが。音楽の世界だけでなく、いろいろな分野で活躍する女性がもっともっと増えれば世の中の彩りはもっと豊かになるのではないかと思います。土木工事の現場や自衛隊の戦闘シーンで活躍する女性が増えるより、音楽を奏でる女性が増えるほうがいいと思うのは偏見でしょうか。
美しいオルゴールで「乙女の祈り」をお聴きください。(YONO)
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